a natural dye

天然染料とは

天然染料(草木染め)は自然の植物(一部昆虫)から色素成分を抽出した液体色素です。

古代から使用されてきた天然染料ですが、現在では百数十年前に誕生した合成染料に取って代わられています。

天然染料を色濃く付けることは難しく、染色方法も手間がかかり複雑であること、また、耐候性も劣り色褪せがしやすい事が挙げられるようです。

 

天然染料の一覧

紫根(しこん)・楊梅(やまもも)・丹殻(たんがら)・五倍子(ごばいし)・石榴(ざくろ)・柿渋(かきしぶ)・槐(えんじゅ)・蘇芳(すおう)・ログウッド・ラックダイ・ゲレップ・お茶・西洋茜(せいようあかね)・黒檀(こくたん)・インド茜(あかね)・梔子ブルー(くちなし)・梔子グリーン(くちなし)・桜(さくら)・キハダ・カテキュー・ミロバラン・ウコン・蓬(よもぎ)・インド藍(あい)

 

 

 紫根(しこん) 17-shikon.jpg

日本、朝鮮半島、中国、アムールに分布します。
多年生の草木で高さは約60㎝、直立し全体に長毛があり、無柄で花は白色、6月頃開花します。果実は4個の分果になり根は太く紫です。
また、5月か10月頃に根をとって日干しにし、水洗いはせずに乾いた土を落とすようにして取り除いたもの、これを生薬の「紫根」といいます。漢方で解熱・解毒などに用いられますが、「紫根」が最も利用されるのは皮膚関係で、外用薬として火傷・凍傷・痔などに用いられます。
日本での紫根染(しこんぞめ)は推古天皇の時代に小野妹子が中国から帰国した時のものが文献上最も古いとされています。
紫根染は紫根を臼でひき、その粉末をぬるま湯に浸して色素を出します。

 楊梅(やまもも) 11-yamamomo.jpg

夏に暗紅紫色に熟す直径1~2cmの果実を結び、生食する事が出来ます。樹皮は古くから染料として、特に魚網を染めるのに用いられました。
塩水に耐えるというのも、この染料の特徴でしたが、合成繊維が出現してからはその方面には用いられなくなりました。
布を染める時、媒染剤にミョウバンを用いると黄色になり、鉄塩を用いるとこげ茶に染まります。主成分はタンニンです。別名では"ももかわ""しぶき"とよも呼ばれています。
楊梅は唾液の分泌を促進する作用があり、消化を助け、健胃・整腸の効果があります。生で食すことができますが、腐り易い為に保存が出来ず、塩漬けやヤマモモ酒にします。

 丹殻(たんがら) 14-tangara.jpg

丹殻は紅樹皮ともいい、蛭木(ヒルギ)属の全体を意味するものです。一般的によく知られているものは「オヒルギ」「メヒルギ」。熱帯・亜熱帯の河口に分布し、マングローブと称されているものはこの紅樹林のことをいいます。
丹殻は一種のタンニン剤です。タンニンにはいろいろな種類がありますが、丹殻は化合すると黒くならずに黒緑色又は褐黒色の沈澱を生じる「フタバ・タンニン」という種のタンニン剤に入るそうです。[カテキュー(阿仙人薬)もこの種に入る] 従って本当の黒染には使えませんが、鉄媒染で標本のような褐黒色になり、石灰媒染で赤茶色を染めることが出来ます。その他にも銅媒染でも赤茶色に錫又はクロムの媒染で橙黄色、明礬媒染で黄橙色の染色が得られます。

 五倍子(ごばいし) 19-gobaishi[1].jpg

各地の山地、とくに沢筋の良好地に多く自生している雌雄異株の落葉小高木「ヌルデ」。この「ヌルデ」の若芽や若葉などにヌルデノミミフシアブラムシが寄生すると、「虫こぶ(ゴール)」が形成されるのですが、「五倍子(ゴバイシ)」とはこの「虫こぶ」のことをいいます。
「五倍子」は約50~60%のタンニンを含み、古くから日本・中国では重要なタンニン資源とされてきたそうです。
秋、虫こぶの殻を破って成虫が飛び出す前に採取して、すばやく熱湯につけ殺虫し乾燥させたものが生薬の「五倍子」です。秋彼岸頃に至って生長の極度に達し黄赤色になります、この時機が採取の時期といわれています。

 石榴(ざくろ) 13-zakuro[1].jpg

「安石榴」(あんせきりゅう)、「石榴」(せきりゅう)といい、原産地はペルシアからインド西北部。漢以降に西域から中国に入った安石は安息のことで、ペルシアから渡ってきた果実が瘤(こぶ)のようであるところから名づけられたそうです。
和名の「ザクロ」も「石榴」の音読で、古く中国から渡ってきたものだといわれています。
日本には薬用の目的で入ってきたもので、幹や根の皮にアルカロイドが含まれていて、戦後まで寄生虫の多かった日本では体内の寄生虫駆除の貴重な生薬として用いられました。
高さ3~5mの高木で、6月ころ小枝の先端やわきに赤黄色の花をつけます。果実は小枝に1~数個ずつつき、果皮は秋に熟します。樹皮・根皮・落花・果皮・葉の全てが染色に利用できます。

 柿渋(かきしぶ) 23-kakishibu[1].jpg

秋の味覚として欠かせないものに柿があります。日本の代表的な果実で古くから生活と結びついた果物ですが、日本原産ではなく、中国の揚子江沿岸から渡来したものです。甘い柿は日本に渡ってから80種類が改良されて出現したもので、万葉集や源氏物語の頃にはしぶ柿のみであった様です。岐阜県の「富有」、静岡県の「次郎」、富山県の「水島」が特に有名です。
薬用には実の利用価値が高い果樹と言え、果実は栄養の高い食品であり、柿の果実、ヘタ、葉、根はそれぞれ薬用とされます。
また染料としては古くから魚網や養殖網などを染めるのに用いられてたそうです。また防水・防腐性があるので、和紙に引き染めして古美術品の箱を包んだり、型染の型紙に用いられるのは有名です。

  槐(えんじゅ) 2-enzyu.jpg

エンジュは中国原産のマメ科の落葉喬木で、大樹になります。若葉はゆでて食べられますし、お茶の代用にも使われたそうです。
若いつぼみを乾燥させたものは槐花米・槐米といわれ、中国では古くから重要な染料とされていました。
黄紙や官吏が着る絹の礼服などを染めるのに用いたそうです。木の高さが10~20メ-トルのもなる樹木なため、農家の防風林を兼ねて家の周囲に植え、蕾を採取して売ったそうです。
薬用としても用いらて、気力増進・視力回復・白髪防止・延命などの効用が記されていました。日本には古くから渡来していた様で、平安時代に"恵爾須"の和名があてられた記述が残っています。

  蘇芳(すおう) 6-suou.jpg

蘇芳は主にインド南部・マレ-半島・インドネシアなどに生育しているマメ科の樹木です。
木材として使用されるとともに、その芯材に含まれる色素で染料として使われてきました。
媒染剤の必要な多色性を有し、アルミニウム系のものを用いれば赤色系に、鉄系のものでは紫色系になります。
我が国では正倉院文書に蘇芳紙、つまりすおうで染色した和紙の事が記されているそうです。また江戸時代には蘇芳を用いて木綿を染めることが盛んに行われていた様です。
色素成分はブラジリン・ブラジレインです。

 

  ログウッド 4-logwood.jpg

ログウッドはメキシコなど中南米原産の豆科の喬木です。
繁殖力が強く、10~20年で6~12メ-トルにもなります。芯材を染料として用います。赤紫色から媒染剤により、灰黒色まで発色します。
日本には明治の以降に入り、檳榔子に変って黒染に用いられる様になりました。大航海時代には、南米からヨ-ロッパへ渡り、海賊の略奪にも逢ったという話です。

  ラックダイ 12-lacdai.jpg

ラックダイはインド東部 ガンジス川流域に生育する樹木に寄生するラック虫が、樹木から養分を吸上げて分泌する樹脂状のものをラックといいます。このラックはさらにシェラックと呼ばれる樹脂とラックダイと呼ばれる染料に精製・分離されます。
ラック、という名前は古代インド語で"10万"を意味し、極めて小さな虫が無数に集まっていることからついた名前とされています。ラックから純粋な染料を取り出すのは、大変な手間がかかり、その秘伝は現在には伝えられておりません。江戸時代には友禅や和更紗の多く用いられたそうです。

  ゲレップ 7-gerepu.jpg

ゲレップはオ-ルドフスチックと呼ばれる、ブラジル・メキシコ・西インド諸島などに生育するクワ科の喬木で、フスチック、イエロ-ウッド、キュ-バウッドなどとも呼ばれます。
色素が多く含まれるのは樹皮と芯材で、これを抽出した液がゲレップと呼ばれます。
ヤマモモと同じ様にモ-リンと呼ばれるフラボノ-ル類とモ-リンタンニンと呼ばれるタンニン類の2種類の色素を有します。
日本には明治初頭に輸入されて、黄木などの文字があてられました。現在でもログウッドに次いで使用量の多い天然染料です。

  お茶 3-otya.jpg

お茶は広く知られてます様にツバキ科の常緑潅木です。乾燥させた葉を染色に用いまた"お茶"として飲用にもちいられています。
もともと中国から日本に伝わってったのですが、古代は全く薬用に供したと伝えられています。
主成分はタンニンで、煎茶は12%、番茶は8%、紅茶は7.3%程含まれております。

  西洋茜(せいようあかね) 8-akane.jpg

あかねはその名の通り、日本で最初に用いられた染色材料と言われています。その根を煎じて染められた赤の色相を"赤根"と呼んだそうです。
日本には自生する多年生の蔓草で葉や茎には刺があります。同じあかねでも東洋あかねと西洋あかねでは植物も違い、当然染色法も違ってきます。
わたしどもの扱う西洋あかねはその成分にアリザリン・プルプリンを含んでおり、明礬媒染では赤く染まります。

  黒檀(こくたん) 18-kokutan.jpg

カキノキ科・カキノキ属の熱帯性常緑高木です。別名を烏文木(ウブンボク)・烏木(ウボク)・黒木(クロキ)ともいい、英名ではエボニーと呼ばれています。
樹高25m、幹の直径は1m以上になります。原産地はインド南部からスリランカをはじめ他の熱帯地方にも植樹されていますが、生育はきわめて遅いといわれています。
幹は平滑で黒褐色、葉は長さ6~15cmの長円形、平滑でやや薄めですが革質で光沢があります。花は雌雄同株で果実は直径2cm程です。
材質は緻密で心材の部分が黒く、細工用の木材として家具や仏壇、建材、楽器などに使用されています。
特にピアノの黒鍵やチェスの駒などに用いられてきたようですが、乱伐が進んでいる上に生育が遅いため現在ではかなりの希少品となっています。

  インド茜(あかね) 24-indo.jpg

茜は天然色素の赤を代表する色素です。世界の温帯・暖帯に生殖し50種類以上あるといわれており、インド茜はインド山地に分布する茜草になります。
茜草は生育する産地の土壌質、気候等により同じ茜属であっても、抽出される色素成分が異なります。インド茜は西洋アカネと比較して染色では赤色発色がよく鮮明で濃い色となります。オレンジ色の根に赤色色素があり、根を乾燥して抽出します。
茜による染色の歴史は深く、正倉院にも色鮮やかな茜による染めの遺品が数多くあります。
薬草としても茜根散として熱性の出血下痢治療に用いられています。

  梔子ブルー(くちなし) 21kuchinashiblue.jpg

「クチナシ」の名前の由来は果実が裂開しないことからだといわれています。静岡県以外の本州・四国・九州の山地から台湾・中国・フィリピンにわたって分布。高さは2m内外で庭園などに栽植される多年生の常緑低木でもあります。
薬用(内用)として、胆汁分泌の促進、鎮静、血圧降下作用、外用としては消炎の効果があるそうです。また白色の花弁は芳香がありわずかに甘味があって、生のままでも、煮ても食用にすることができるそうです(煮るとぬるぬるになる)。
熟した果実は染料となり、古代より染色に重用されていたといわれています。バイオ技術により近年では青系色素としても使用されるようになりました。

  梔子グリーン(くちなし) 22-kuchinashigreen.jpg

「クチナシ」の名前の由来は果実が裂開しないことからだといわれています。静岡県以外の本州・四国・九州の山地から台湾・中国・フィリピンにわたって分布。高さは2m内外で庭園などに栽植される多年生の常緑低木でもあります。
薬用(内用)として、胆汁分泌の促進、鎮静、血圧降下作用、外用としては消炎の効果があるそうです。また白色の花弁は芳香がありわずかに甘味があって、生のままでも、煮ても食用にすることができるそうです(煮るとぬるぬるになる)。
熟した果実は染料となり、古代より染色に重用されていたといわれています。バイオ技術により近年では青系色素としても使用されるようになりました。

  桜(さくら) 20-sakura.jpg

落葉高木。生長がはやく、花は大型で種類も多いのですが、栽植されるのはソメイヨシノ(染井吉野)が多いといわれています。ソメイヨシノとは伊豆半島のエドヒガン(江戸彼岸)とオオシマザクラ(大島桜)の間でできた自然雑種です。江戸末期に江戸の植木屋「染井(そめい)」によって初めて売り出されたことで、この名前がつけられたそうです。
染色には里桜(オオシマザクラから作られた園芸品種)やソメイヨシノなどの大島桜系の栽培種が利用され、緑葉・樹皮・幹材・小枝・また花を染色に利用されています。

  キハダ 15-kihada.jpg

各地の山地に自生するミカン科の落葉高木です。直径1mをこすものがあり、樹高は25mになる大樹もあります。5月~6月頃に黄緑色の小花をつけ、幹の外皮は厚いコルク質で、内皮は黄色をしています。その内皮を乾操させたものを生薬の黄柏(おうばく)としますが、今日でも重用な医薬品のひとつで日本薬局にも入っています。黄柏はすぐれた整腸剤として、また外用消炎薬としても用いられています。
染色としては、原始時代から樹皮を用いて使用されていました。黄色や茶味の黄緑色、鶯色などに染めることができます。

  カテキュー 5-katekyu.jpg

カテキュ-はインド原産のマメ科の喬木で、熱帯地方の各地で栽培されています。この幹材の煎汁を煮詰めてエキスにしたものが、ペグ阿仙薬といって、ビルマやタイで生産されています。
日本には鑑真和上が中国から持って来た、と伝えられています。阿仙の成分はカテキン・タンニン酸・ガンブリンなどを含有しています。薬用・染色用などに用いらたと伝えられています。

  ミロバラン 9-mirobaran.jpg

高さ10~20mの落葉木。果実は整腸・下痢止め、抗菌作用があるとされています。
日本への伝来は古く、正倉院の種類薬帳に記載の呵梨勒(カリロク)は,ミロバランとされています。
「ブッダは成道後,激しい腹痛を患われたが,それを見たインドラ神(帝釈天)がミロバランの果実を捧げられ,ブッダは忽ちにして快癒された。」と伝えられています。

  ウコン 1_ukon.jpg

うこんはインド原産の植物で熱帯・亜熱帯地方、日本では沖縄地方で精算される宿根草です。
最近話題の昇る事が多いですが、黄色色素のクルクミンが含まれている事に起因します。
これはインドカレ-の黄色色素と言った方が馴染み易いかも知れません。
日本には室町時代に渡来し、たくあん漬の着色料として用いられました。
染料としての堅牢度は高くありません。

  蓬(よもぎ) 10-yomogi.jpg

よもぎは九州・沖縄・台湾・中国に自生するキク科の植物です。葉は羽状に分れており表面は深緑色ですが、裏の葉白い綿毛が生えています。
春には若葉を摘んで草餅(蓬餅)にします。蓬には邪気を払う力があり、これを食べると寿命が延びる、という言い伝えから、3月の節句に供されます。蓬は別名モグサとも言われますが、これは燃え草、つまり葉の裏の生長した葉の裏面の白い毛を集めて乾燥させたものを灸治に用いることからきています。
葉と茎を用い、結合する金属塩によって複数の色相に発色する多色性染料である事はわかっています。近年はアトピ-性皮膚炎などにも良い、と言われ始めています。

  インド藍(あい) 25-ai.jpg

インドシナの南部の原産といわれています、日本には飛鳥時代に中国から渡米し広く栽培されて染色または薬用として使用されていたようですが、現在では徳島県のほかは各地でわずかに作られているだけになりました。
1年草で茎の高さ70cm前後。葉を乾かすと藍色になるので、藍色の色素が含まれている事が分かります。9月頃、穂状の小花をつけ、花は紅色のものが多いですが白花もあります。
藍は水色(浅葱)から藍色「縹」(はなだ)、紺色までの青色のすべてを染める天然色素の代表的な青系色素です。